気まずい美容院 - 多重人格

気まずい美容院

8月7日 晴れ

 縮毛矯正をかけて、わーいストレートだストレートだ騒いでたら2か月も経ってた。せっかくストレートになったんだから、できるだけ切りたくないよねーとかなんとか言って、伸ばしに伸ばしてたら、もさいことになった。あり? ストレートになれば、どんだけボサボサでもオシャレになるとか思ってたのに。天パの僕が描く妄想劇。ストレートヘアーへの盲信。わかったわ。やっぱりストレートになったからといって、劇的に人生が変わるかと言ったらそうでもないな。もっとこう、AXEのCMみたいになると思ってたんだけど、駄目だわ。やはり髪だけでなく、色々変えないと。顔面とか。

 とまあストレートヘアーに失望したので、美容院行った。本山のちゃらーいお店。3年前ぐらいに、友人Aからもらった紹介カード(しわくちゃ)を使って行ってきた。

 カットが4000円後半とかするスイーツな美容院だったので、かなり尻ごみした。あのチャライ雰囲気、自信ありげに鋏を振り回す美容師、ファッショナブルな客。空気が怖い。空気が俺を拒絶する。

 ええい、ままよ。入ったら、無駄に愛想のいいお姉さん美容師の登場。しゃべるしゃべる。営業的友達感覚っていうのかな? 無駄に心の距離が近いっつーか、親しげなのに空々しいっつーか。二流のキャバ嬢とかってこんな感じなんだろうな……とか思いながら、ペチャクチャと喋っていたら、なぜか話の流れで、トリートメントすることになったので、野口が3人いなくなった。いや、やっぱストパーで髪傷んでたし? ちょうど持ち合わせがあったものだから? お姉さんも是非っていうし? 一生ものじゃないかなこういうのってさ。とか言いながら僕は将来羽毛布団とかを買うんだろうな。

 でまあこれはジャブ。もっと微妙なこと起きた。シャンプー台に僕を座らせた美容師が、親しげに話しかける。「ねえねえ、A君って友達なの? あそこにおるよ」見ると、3年ぶり、紹介カードをもらったA君が、正面のカット台に鎮座しておられる。やばい。何がやばいって気まずい。高校のとき同じクラスだったA君は、確かにしゃべるし、みなと一緒に騒ぐこともあったが、二人きりで会うのは忍びない。そんな関係だった。ちびまる子ちゃんで言えば、城ヶ埼さんと野口さんの関係といったところ。嫌いではない。嫌いではないし、むしろ好きな人種に入るのだけれど、いかんせん二人で絡むのは……

 とかなんとか考えてたら、美容師さんがやはり無駄に気をきかせてくれ、「呼んでみる? おーいA君! 友達だよ!」と大声あげたので思わず失笑した。最後の「友達だよ!」というセリフは「耳をすませば」で言えば、「月島ー。面会だぞ! オ・ト・コ・の!」の「オ・ト・コ・の!」ぐらい空々しく響いた気がした。いや、あんた。何を余計なことを。A君、その呼び声に気づき僕を発見「おおー」と声を上げる。僕も絞りだすようにして、「おお……」と声を出す。

 しかし向こうはパーマ中、こちらはシャンプー前。なんやら取り込んでる中、無理やり邂逅させられた僕ら。ご丁寧にも、椅子を対面させられて、「さあ話せ」みたいな空気作られた。なんだこれは。犬の種付けじゃあるまいし、この無理やりなご対面。やはり変な空気流れた。いや、まあただでさえ気まずいってのもあったけど、今から僕シャンプーするしな。なんかシャンプーを遮ってまで僕らは話したくもないって感じが、向こうにも僕にもあった。嫌いとかじゃなくて。美容院の作業工程的問題でさ。長々と喋るとシャンプーがいつまで経っても始められないじゃないっすか? みたいなこと考えてたら、ものすごい気まずくなり。二人とも押し黙った。数秒の沈黙。すると美容院の人が、おろおろ声を上げながら、「シャ、シャンプーしますねっ!」と突然の会話終了の笛をならしてくれたので、ほっとするやら、さらに気まずくなるやらなかったわ。

 で、シャンプー終了。前を向くと。まだA君パーマやってはるわ。シャンプー終わったから僕もカット台に移れってさ。すると美容師が、「A君のとなりがいい?」などと聞いてきたので、心の中で憤慨した。イヤです。でもそう聞かれてイヤですなんざ言えんだろうが。僕の逃げ道をことごとく塞ぐ美容師様。「あ、はい」なんつって、心にもないことを口にし、A君のとなりに移動ー。

 さて……。横を見やるとA君、気まずそうに本を読んどる。僕は手もち無沙汰にきょろきょろする。会話を探す。無駄に手をぷらぷらさせる僕。あっちこっち高校時代の記憶を引っ張り出す。ないわ。暗黒時代の記憶は消去されている。でもA君関連の情報が今、ほしいんだ。がんばれ僕の海馬。しかし万策尽きた僕は、ひとまず眠りについたフリをするしかなかったのです。

 そして、

「え? 隣に座ってんだよ? 話しなよ?」

という美容師の声が、僕とA君の悲劇のエンドロールを巧妙に彩った。


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 Y平 (31)

現在:
Androidプラットフォーム開発者。シナリオ作成も趣味でコンテストに
色々応募をしています。人形劇もやっています。

略歴:
2004年〜2009年 名古屋大学で人形劇サークルで活動後、作家を目指すも挫折。
2009年〜 札幌のモバイルの会社に勤めて適当にプログラミングやらに従事。
2012年 ヒューマンアカデミー シナリオライター講座受講。シナリオライターに。
2013年4月、妻と結婚
2015年8月、オモコロライターになる

作品暦:
「えんむすび」 子供映画製作ワークショップ2012最終候補
「思い出はとめたままに」 2012年南のシナリオ大賞 落選
「マリモの人形劇」アニメシナリオ大賞 選考中(2015年4月現在)
「しっくす・パックす!」第22回電撃コミック大賞 選考中(2015年4月現在)
「上から」コバルト短編小説新人賞 選考中(2015年8月結果発表)

好きな作家:
筒井康隆 綿矢りさ 星新一 藤子・F・不二雄 戸塚たくす

その他活動:
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コメント
非公開コメント

初コメです。
文章のたとえが秀逸すぎるww笑わせていただきました。
これからもちょくちょく見に来ようと思います

2008-08-08 18:06 | from 風船黒子 | Edit

なんか…一難去ってまた一難って感じっすね(笑)

僕も、美容室行ったら、まな板の上のコイ状態になってしまうので、Y平さんの苦労が痛いほどわかりますwwwww


あ、この前はありがとうございました(^^)

2008-08-08 21:00 | from ゆーき | Edit

てか、営業トークの美容師さんとペラペラ喋るって結構すごく
ないっすか?僕、それすら相当苦手なんですけど。
話しかけないでくれ!と思ってしまいます。マジで。

2008-08-09 00:33 | from Ψ

よかれと思ってしたことなんだとは思います。
しかし、あまりにもキラーパスがすぎる。
いたたまれません。

そう言えば、肉欲企画でY平さんのことが
書いてありました。
すごく昔のはあちゅうさんを称える内容でした。

2008-08-09 17:35 | from 安寿

駅で昔のちょっとした友達がいて話しかけようか迷ってるうちに今さら話しかけるのも…みたいな空気になって、以降さらに気まずくなり感じと似てますよね(´・ω・`)


てかみんなコメが長くてチビったw
俺も対抗したwww

2008-08-10 22:02 | from

風船黒子さん>
たとえが冗長すぎるかもしれん……と思ってたとこで……
励まされました。ありがとうございます。

ゆーきさん>
いやいや、ほんとくだらないこと言ってすいません。あ、返信が遅れててダブルでスイマセン。スイマセン。

ψさん>
いやー、キャバの人みたいですもん。たぶん客が喋れるように仕向けてる感が。

安寿さん>
本当にキラーパスすぎました……隣に座る? って言われたときはマジでこいつはわざとやってんのかと思った。
ちなみに肉欲さんの言ってたことは本当です。

こさん>
ほんとよく分かってる人だ! そのとおりっすわ……気まずさに満ちてるなー世の中。

2008-08-11 22:58 | from Y平@管理人

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