引っ越しコンペティション - 多重人格

引っ越しコンペティション

 引っ越しするの。なので引っ越し業者に依頼しなければならない。やだなーやだなーなんて思いながら重い腰を地面につけたままにしてた。あまりに動かない僕を見て業を煮やした妻。いつの間にかインターネットで見積もり依頼を出そうとしてる。「本棚がいっこでー、衣装ケースが5つでー」とかなんとか。ブツブツ独り言いってました。僕はそれを見ながら鼻くそほじりながらお茶飲んでました。

 「できた!」

 妻の嬌声が響く。引っ越し業者に見積もり依頼だしたよーと。ウキウキの妻がおる。あらマジで? 一括見積もりで大手引っ越し業者6社にいっぺんに見積もり依頼を。すごい。僕は引っ越しはしたいが引っ越し業者に電話はしたくないという真性怠け者なので見習いたい。ははあー妻様ーなどと平伏してたら異変おきた。

 ジリリリリリン! ジリリリリン!

 妻のiPhoneがにわかに鳴り出す。見積もり依頼して1分である。ちなみに22時である。どういうルートでこの迅速電話がかかってくるのか興味わいた。その前に常識的に電話してくる時間じゃない。

 一抹の嫌悪感を覚えつつ妻が電話に出ると「アリさんマークの引っ越し社」だった。夜分遅くにすみませんだとかなんとか。じゃあかけてくんなよとか思いつつ訪問見積もりの日を決める。ではお願いしますねーなんつって電話を切る。はあ、緊張した、と妻のため息。

 そしたらアリさんと話してたわずか3分の間に、妻の電話に留守電が2件、メールが4件。全て訪問日決めるから折り返し連絡しろという旨。

 架空請求を思い出す。「あなたエロサイト見たから至急ここに連絡してください」テイストな。すげえ怖いのよアレ。実際に電話したらすげえ罵倒されっからね。無視するに限る。

 でも無視できない。なぜなら引っ越し業者だからだ。もう夜も遅いので、明日にしようとひとまず寝る。


 次の日。仕事を終え家に帰ると妻が浮かない顔をしている。妻の携帯を見ると昼の2時3時にガンガン電話かかってきてる。全て引っ越し業者である。もはや架空請求よりひどい頻度。どうして仕事中の昼にかけてきてつながると思うのか。しかも「2月上旬に引っ越すんなら早急にやらないとヤバいよ!」と脅しかけてくる。留守電で。これは悪徳業者がよくやるやつ。「いついつまでに支払いしないと違約金発生→裁判起こすぞ」の属性。架空請求がよくやってくる手法。

 キレた。なんでこんなバカなのっつって、言われた通り折り返しお電話したよ。一発説教かましてやろうってね。

 そしたらオペレーターさんすごい。底抜けに明るい。ぐいぐいくる。週末に訪問見積もりをお願いしたら、他の引っ越し業者の訪問日も聞いてきた。はあ、同じ週末に考えてますっつったら、

「いやー、やっぱ引っ越し時期迫ってますから早くやりたいんですよねー。明日とかどうですか?」

 と返答。明日空いてる? ってお前。友達か何かか。平日だし。仕事でいないっていってるのに。明日飲みに行きましょうよのテンションで聞いてくる。

 丁重にお断りしたところ、今度は他の引っ越し業者と同じ時間に訪問するっつってきた。すごい。契約取る気満々である。こちらの都合とかじゃない、有無を言わせない契約したいオーラ。「勉強させてもらいますんで! 勉強!」とぐいぐいくる。もう疲れた。いいよ。

 んで無事いろいろな引っ越し業者を我が家に招くアポを取ったのだけれど、まだ終わらなかった。アート引っ越しセンターさんとの電話。なんかアートさんは引っ越しの見積もりと一緒にインターネットの契約も紹介してくれるらしいよ。いらない。自分で探す。ただでさえこの電話攻勢にイライラきてるというのにこれにインターネット業者が加わったらたまらない。インターネットは自分で探すんでけっこうです、との旨を伝えて電話を切った。

 そしたら電話切って30秒だよ。速攻で電話がなった。出るとインターネット業者だった。アートさんに紹介受けまして云々。いや断ったんですけどね、って言ったら

「それがですね、キャッシュバックがございまして」

とまったくめげる様子を見せない。負けたよ。アンタ達すごいよ。

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 Y平 (31)

現在:
Androidプラットフォーム開発者。シナリオ作成も趣味でコンテストに
色々応募をしています。人形劇もやっています。

略歴:
2004年〜2009年 名古屋大学で人形劇サークルで活動後、作家を目指すも挫折。
2009年〜 札幌のモバイルの会社に勤めて適当にプログラミングやらに従事。
2012年 ヒューマンアカデミー シナリオライター講座受講。シナリオライターに。
2013年4月、妻と結婚
2015年8月、オモコロライターになる

作品暦:
「えんむすび」 子供映画製作ワークショップ2012最終候補
「思い出はとめたままに」 2012年南のシナリオ大賞 落選
「マリモの人形劇」アニメシナリオ大賞 選考中(2015年4月現在)
「しっくす・パックす!」第22回電撃コミック大賞 選考中(2015年4月現在)
「上から」コバルト短編小説新人賞 選考中(2015年8月結果発表)

好きな作家:
筒井康隆 綿矢りさ 星新一 藤子・F・不二雄 戸塚たくす

その他活動:
ニコニコ動画ゲーム実況一覧
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コメント
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見積もり依頼あるある

そう、引越し業者に限らず車の買取などもそういった複数の業者への見積もり依頼サイトが氾濫している。

かく言う自身も昨年の11月頃に車を売りたくなって、軽い気持ちで見積もりサイトに簡単な事項を入力した途端よ…。
本当にさながらひと昔前のそういうSNSに書き込んだ直後のごとく電話、メール、留守番の嵐。

その時はそんなに来るもんだと思ってもいなく、且つ車を「売る」と言うよりも見積もりを取りたかっただけなのに、もう今日決めましょう!いや、今決めましょう!と半分、恫喝に近い形で各々の業者から言い責められ、辟易したので一件一件丁重にお断りを入れて事なきを得た。

ホント、ああいう業者と詐欺師と営業職と…紙一重の差なんだろうねぇ。

2015-01-08 11:35 | from 通りすがりのシャグおじさん

No title

あー、車か! 確かにきそうだな。詐欺師と営業職と紙一重ってのはかなり分かる。俺の実際の仕事も詐欺みたいにいらないもの売ろうとしてるしな 笑

2015-01-09 23:40 | from わいへい

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